青天の霹靂
皆さん、こんにちは!
私は、週初めの27日から1週間、中国に行っていました。
現地法人10周年で訪中してから約半年振りの中国出張でしたが、今回はかなり困難なミッションでした。
というのは、その現地法人に突如、6月末に退去通知が出ていると、5月初めに上海日本総領事館から連絡が入りました。
現地法人は2002年に設立し地元政府と2020年まで賃借契約を結んでいました。
正に、寝耳に水、青天の霹靂とはこのことです。
僅か半年前に地元政府も同席の中、10周年の式典を開いたばかりです。
6月末というと約1ヶ月しかありません。
万が一、その様な事態になってしまうと、現地法人だけでなく、生産の約20%を依存している本社にとっても、由々しき問題となりかねません。
会社の浮沈に関わる重要課題ですので、これは完全に社長マターということになります。
従って、急遽、中国に飛ぶことにしたのでした。
現在、現在法人の体制は、資本は100%当社が出資し、2008年以降は法人代表を信頼出来る中国人に譲っています。
簡単に言いますと、資本は日本、経営は中国ということです。
ただ、この件に関しては、現地法人から詳しい連絡は入っていませんでした。
現地法人の中国経営者に確認した所、3月に2回、退去通知が届いているとのことでした。
彼も経営者として、私や当社に心配をかけたくないとの思いから、3月中旬に来た退去通知後、直ぐに弁護士を雇い、裁判をも辞さない覚悟でこの問題を解決すべく奔走をしていた様でした。
その行動の一環として、日本総領事館にも今回の事案を弁護士を通じて 告知し、5月初めに上海日本総領事館から私に連絡が入り知るところとなったのです。
責任者として、一喜一憂して私や当社を直ぐに頼るのではなく、自らが解決をするという姿勢で臨んでくれていたことには頼もしくも感じましたし、彼に任せて良かったとも思いました。
ただ、もう少し早く事の詳細を報告してもらいたかったとは思いますが……。
現地法人経営者もこの問題は解決出来たかもしれませんし、その自信はあったと考えますが、6月末という期限もありますし、長引けば長引くほど事態は劣悪になり関係修復もより困難になってしまいます。
今回の件で私がとった行動は、行く前に日本総領事館の担当領事に、地元政府そしてそれを統括している市政府の見解を調査して頂く様に依頼をしてありました。
そしてまず上海日本総領事館に行き、担当領事から客観的に事案の説明を聞きました。
それから、翌日、現地法人のある連雲港市に入り、現地法人経営者と弁護士に事の詳細と事案の見解を聞きました。
そしてその後、晩に連雲港市の市政府で対日担当者と食事をし、事案についての見解を聞きました。
この対日担当者とは現地法人設立来の付き合いです。
日本総領事館、現地法人経営者及び弁護士そして市政府対日担当者の話を総合すると、契約に関しては、2002年に締結した地元政府との契約は、地元政府からの要請で2009年に家賃の値下げを理由に2012年6月までの契約に巻き直されており(これは納得の上で現地法人経営者がサインをしています)その後1年の自動更新になっているということでした。
それで行くならば2013年6月で一応の契約は切れる訳ですが、昨年と同様に自動更新となる筈でした。
そこで厄介なのが、地元政府が勝手にこの4月に中国人個人に土地を売却し、今は土地の所有権が地元政府から個人へと合法的に移転しているということでした。(後で解った事ですが、以前、地元政府が開発の為、その個人の土地を取り上げた様です。その人は地元政府を相手取って裁判を起こし勝訴したということでした。そこでその賠償として土地を譲ったのでした。)
まぁ、分かりやすく言えば「地上げ家」ですね。
土地を売却して所有権を移転し、強制退去または、法外な転売価格や賃料を要求するというやつです。
日本ですと、現在、借りている会社がありながら、何の相談も無しに、政府が勝手にその様な行為をすることは考えられませんが…。
まぁ、みんなの見解を聞き、だいたいの所は見えて来ました。
私は当初から、ベストのシナリオは事を荒立てず、現在の条件で政府であれ個人であれ再契約出来ること。
ベターは、家賃や契約期間がある程度納得のいく所で折り合いがつき再契約出来ること。
最悪のシナリオは6月末、強制退去。
この様に考えていました。
現地法人経営者及び弁護士は、私の考える話し合いによるベストとベターのシナリオではなく、まず事案の矛盾を徹底的に主張するという作戦でした。
ついに、現地入り3日目の朝、地元政府で第1回の話し合いを持ちました。
地元政府は当初約束をしていた地元政府のトップではなく(出張とのことでしたが…)主任クラスとの話でした。
暫くしてNO 2と新所有者の中国人も同席をされましたが…。
作戦通り契約の矛盾や道義的問題などを主張し、喧嘩腰の議論となり、堂々巡りを繰り返しました。
その中で1つ解った事は、相手は強制退去は考えていないということでした。
ただ、家賃は今までの3倍という法外な価格でした。
私の中で最悪のシナリオは消えたと確信を持ちました。
第1回目の話し合いは結論が出ないまま物別れに終わりました。
その後、会社に戻り、現地法人経営者の見解を聞きました。
彼は今のままなら裁判の手続きをして、その間の猶予期間である6ヶ月から1年の間に移転も含め、次の事を考えなければならないという様な感じでした。
これは不味いと思いました。
何故なら、上述の様に、私が考える最悪のシナリオは消えたのに、自らが最悪のシナリオを作り出してしまう危険性が出てきてしまったのです。
そうなれば現地法人、当社に多大な損害が発生するだけでなく、何よりも両社の社員に不安を与えてしまうことになります。
私の腹は決まりました。
現地法人経営者のプライドは尊重しつつも、話し合いによるベター作戦で行くことにしました。
その日の昼、市政府の対日担当者と第1回目の話し合いの報告方々、昼御飯を食べることになっていました。
そこで、話し合いの内容を話をし、ベター作戦の中で最も重要な家賃を譲歩案として現在の50%アップ なら私達は受け入れる用意がある旨を対日担当者に話をしました。
当然ながら彼は、連雲港市に日系企業を誘致すること、そして、連雲港 市に投資をしてくれた日系企業の円滑的な運営に責任を果さなければならない立場の人です。
今回の事案も日本総領事館から彼にプレッシャーをかけてもらいました。
市政府から見ると、地元政府は下の立場です。
日本でゆうと、県があり市があり町があるという感じです。
今度は、対日担当者が自ら、地元政府のトップに連絡をしてくれ、ベター作戦の内容を基に、新所有者である中国人と調整をする様に働きかけてくれました。
そして4日目、市政府の対日担当者にも同席を依頼し、地元政府のトップと譲歩案に基づき話し合いをしました。
多少の誤差はありましたが概ね私の思い描いた所で大筋に達しました。
まだ細かな所はありますが、全部ごちゃ混ぜで話をするとややこしくなります。
まずは大筋で合意して、そして詳細を詰めるということです。
今回の契約は新所有者との契約になりますが、地元政府を逃がさない為にも仲介者ということで署名する様に依頼し、了承も得ました。
これを持って、今回のミッションは成功利に終えることが出来ました。
今回のことは会社の浮沈に関わることなので社長マターですが、これはそれぞれの立場においてもやらなければならないミッションがある筈です。
今、持っている資源を使って戦略を練り、キッチリと決められた期限までに結果を出さなければなりません。
資源がない…時間がない…と、出来ない理由を考えてもミッションは成功しないのです。
今回の事案の資源は人でした。
日本総領事館の領事、連雲港市対日担当者を駆使し順番を間違えず、絶えず報連相を的確に行い、食事を共にする、その中で実現性の高い目標とそれに伴う行動を臨機応変且つ機敏に対応しながらステップをあげていき達成を計る、こんな感じでした。
今回の事案でお世話になった方々には本当に感謝申し上げます。
情けは人の為ならず。
4日目の晩遅く上海に戻り、お世話になった日本総領事館の領事と報告方々食事をし、3人でミッション達成の美味しいお酒を酌み交わしました。
そして5日目、中国を後にし、帰路に着いたのでした。