コラム【第35弾】 2018年経済動向
年が明け早20日ほど経過しました。
遅くなりましたが、今日が本年最初のコラムです。
今年もどうぞ宜しくお願い致します。
2018年初回のコラムですので、新春コラムとして、今年の経済動向について記述させて頂きたいと思います。
年明けの大発会……
7日には「笑う戌年」と言われるように株価は22,937円をつけ、バブル崩壊後の23,113円(92年1月)以来、実に25年10ケ月以来の高値となり堅調な伸びを見せています。
一方で為替相場は昨年末までの円安傾向から一転して円高傾向へと潮目が変わった感じです。
戊戌(つちのえいぬ)という干支は、「変わり目の年」と言われますが、早くもその兆候が現れて来ているようです。
では果たして、この2018年はどのような年になるのでしょう?
まずは例によって、足元である2017年の検証・分析をしてみましょう。
2017年、閣議決定をした経済成長目標は名目で2.5%でした。
結果はGDP2.5%+という事ですので、アメリカの3.3%と比べると少し落ちるものの、目標をクリアした形となり、比較的好調な状況だったと言えます。
また、内閣府発表による毎月の景気動向指数では、戦後2番目に長かった「いざなぎ景気」を超えました。
*参考
いざなぎ景気……昭和40年11月~45年7月まで
現在…………………平成24年12月~
次に数値結果の要因を紐解きますと、GDPの約60%を占める個人消費は前年比マイナスです。
……にも関わらず、+2.5%という事は、欧米経済の好調もあり、円安基調をベースに輸出が堅調だった事に尽きます。
更に上記を深掘りすると、安倍政権発足以来、金融量的緩和やマイナス金利政策などの円安誘導により、大手企業を中心に輸出産業が好調に推移をし、その業績を背景に株価を押し上げて来ましたが、一方で実質賃金は中々上がらない……よって個人消費は伸びない……こう言う事だろうと考えます。
では、何故実質賃金が上がらないのでしょうか?
日本は国内全企業の約90%が中小企業で、労働人口も約70%を占めています。
大手企業輸出企業を中心に業績好調であっても、その恩恵が中小企業にまで回っていないのが現状です。
従って、大手企業10%…労働人口の30%は景気が良いと思われているかもしれませんが、私達には全然実感がない訳です。
中小企業の社長達との会合でも「若干、モノが動いてきた感じはするが、円安による原料の値上げや売価転嫁がままならず、売上は微増だが、利益は前年割れ…」………こんな話を良く聞きます。
従って、企業の90%を占める多くの中小企業では、賃金を上げられる状態にはなく、ボーナスを支給している企業も50%程度です。
これでは中々、個人消費は伸びません。
個人消費を改善するには可処分所得を増やすこと……それには実質賃金をプラスにしなくてはなりません。
しかし、上記の内容から大手企業を中心に実質賃金はやや改善されたものの、足元では4ヶ月連続マイナスとなっており、個人消費が依然低迷を続けているのです。
2017年の経済目標はクリアされたものの分析をすると上記のような内容となります。
このような足元の検証・分析を踏まえた結果、2018年はどうなるのでしょう?
エコノミストの予測は7割方、昨年同様、好調な経済が続くだろうと予想しています。
私見としましても、トランプ大統領問題、北朝鮮問題など突飛な状況が起こらない限り、比較的前年比ぐらいには推移するのではないか?と考えています。
但し条件として、個人消費が若干でも前年比プラスにならなければならないと考えています。
何故ならそれは、輸出産業に若干陰りが見え始めているからです。
今まで輸出を牽引して来た自動車産業ですが、昨年12月、出荷台数が前年割れをしています。
自動車産業も近い将来、電気自動車という大転換期を迎えます。
出荷台数割れは果たして一過性のものか?どうか?
この1月以降推移を見守る必要があります。
加えて、今年は円高傾向になるのではないか?という点も輸出産業にとっては憂慮すべきポイントです。
まだ発表はされていませんが、日銀が政策転換をし、量的緩和の縮小を始めている傾向にあります。
これまでも異次元の量的緩和により、日銀は、約80兆円規模の資金供給を行う政策を行って来ましたが、足元を見ると実質的には50~60兆円に抑えられています。
加えてこれもまた、禁じ手であるマイナス金利政策も期間が長くなれば金融機関の収益に悪影響が生じ、それこそ逆に市場の混乱を招く結果となってしまいます。
昨年の秋頃、メガバンク3社は支店の統廃合…31000人の人員削減を打ち出しています。
最早、マイナス金利による金融機関への悪影響が出始めました。
安倍政権発足…そして黒田日銀総裁就任以降、異次元の量的緩和・マイナス金利という劇薬を使い続けて来ましたが、いつまでも劇薬を使い続ける訳には行かず、上記のような事情を鑑み2018年は出口を模索する年になるのではないか?と考えます。
現日銀総裁である黒田さんの任期は今年の4月までです。
この辺りが大義名分もあり、金融政策の転換となるかもしれません。
量的緩和を縮小し、マイナス金利政策がゼロ金利へと転換されると日米の金利差は縮小し、円高に推移します。
経済成長に大きく関わる為替に関しましては、政策の転換があるのか?ないのか?
この点が注目されます。
上記のような懸念材料から、今まで牽引して来た輸出産業にも今年は陰りが見えるかもしれません。
従って、経済成長には、個人消費の動向が大きな鍵を握ると考えています。
そのキーワードは、「円高」と「中小企業の業績」及びそれに伴う「賃金の上昇」です。
まず、円高推移となれば、原料の高騰も抑えられ、売価転嫁はままならずとも、中小企業の利益率は若干上がるはずです。
企業として少しゆとりが出るには時間を要する事になりますが、それを僅かでも社員達に還元し、賃金を押し上げる事が重要です。
それにより個人消費が上向いて来れば、堅調な経済成長が続くと考えます。
何故なら、個人消費はGDPの約6割を占めるからです。
そこが上向きになれば底堅いものになります。
また、円高になれば輸入商品を中心に物価が下がる事に繋がります。
例え、賃金が上がらないとしても、物価が下がれば、モノは買いやすくなり、私達国民も生活がし易くなり、個人消費は上昇します。
2018年は貿易出荷数が減少し始めた輸出産業において、例え円安に推移しても、経済成長を牽引することは困難かもしれません。
従って、円高に推移するのか?どうか?が一つの焦点です。
それにより中小企業の業績が回復し、個人消費が伸びるか?否か?……これが2018年の経済成長を大きく左右すると考えます。